社内報(まごころこみゅにけーしょん)より

Founderより

●09年4月1日号

雪虫と葬儀

ありがとうございます。
3月中旬いりなか・神宮の2店を撤退、縁ある店を諦めねばならぬ“力の無さ”を、今後の努力で越えて行きたいものです。
一方18日に、町田市近くの横浜線・淵野辺駅に「Osozai-ya 美濃味匠淵野辺店」がOPENしました。開店前には100人近くの近所の方がお待ち戴ける光景に責任の重さを感じました。お陰で予算を大幅に上回る売上も出来、東京地区のモデル店になればと念じています。

先日、名古屋名鉄ホールで京都大学の研究所が「京都からの提言」というシンポジウムを聴講しました。幸島司郎教授の講演で、雪虫の研究発表があり、お伝えをします。
大学生のころ、雪の上をごそごそ歩き回っている雪虫を研究するうちに「氷河にも虫がいるかも知れない」と妄想するようになり、1982年に初めてヒマラヤへ。運良く、氷河に住む昆虫やミジンコを世界で初めて発見し、氷河にも生態系があることを明らかにし学問定説を覆す業績を打ち立てられました。
雪が積もり重なり氷河が出来、長年かかってゆっくり流下して末端部で消え無くなるのが氷河です。
雪中で交配したオスはそのまま命を失い、授精したメスは氷河の表面に這い出し産卵地を探す訳ですが、どのメスも必ず上流へ遡り産卵することを目にしました。なぜなのか?
受精したその場所で産卵することを何代か続ければ、だんだん流下する氷と共に氷河の末端まで流れ落ちて行く。氷河の氷のなかにある藻状の食べ物がなくなり、雪虫の種は滅亡してしまう。  
幼虫が誕生したときに、現在の親虫が適応している生存環境と同じでなければならない。だから流れ落ちる距離分だけ、上流に登り産卵する。結果として、親虫が生存していた場所で幼虫が産まれ出る。即ち、雪虫は自分の生きる位置を本能的に把握して行動しているのだ。

当社のお客様である「あんと」葬儀社さん・浅野社長の奥様からお話を伺いました。涙が流れ止まらず感動しました。奥様は10年ほど前、お身内を事故で亡くされる悲しみに遭われました。その葬儀の際、遺族の思いとは隔たりのある葬儀社の態度に疑問を持たれました。しかし葬式は「葬儀業界の常識」が罷り通っており、“葬儀業界の慣例のまま、業者の指示に従い執り行うのが当然のことだった、そんな葬儀体験を持たれたそうです。
その後、葬儀司会の職に関わっておられた現・浅野社長と再婚されました。曲折あり、7年前に、ゼロベースから現在の「あんと」を起こされました。手書きのチラシを配布したり、苦難のスタートを切られました。
「親族を亡くすという一瞬は、遺された家族のその後の人生に大きな影響を与えるもの」「遺族の思い」を最優先する葬儀を天命と感じて仕事をしよう。金儲けのための葬儀事業の考えを捨てよう。一生に一度のセレモニーの葬儀には、遺族が何でも相談できるように24時間・2日間つきっきりにスタンバイしていよう。生きている時、葬儀費を心配せねばならぬような高価な葬儀費用は否定しよう。・・・・・・と。
例えば、当社にご注文いただいている葬儀食も、一円の手数料も取られていません。「手数料が入ると思えば、どうしても“個数を多く、単価も高いもの”を遺族(顧客)に薦める」ので、高額な葬儀費になってしまう。
遺族の方に“おいしい葬儀食で喜んでもらえれば嬉しいから”、本当に遺族の立場に立って・・・・・。365日、24時間、守り続けてこられました。“これが悩みながら求めてきた、私の「生きる意味」なんです“。

氷河が流れ落ちるように、世の中は常に変化し続けています。自らの拠って立つ位置は、どこなのか?
「あんと」様のお客様の喜びのために・・・原点を見つめる、雪虫のように未来の変化をも読み取って、拠って立つ場・目的をもう一度 考えたいものです。